片足で行うターンの種類
以前、ターンの種類についてコメント欄で説明させて頂いたのですが、文章だけの説明では難しいと思い、改めまして図を交えながら説明したいと思います。 …今回はいつもにも増して長いですが…内容的に分割しない方がいいと思いましたので…。 お付き合い、宜しくお願いします。
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…と、その前に。 用語について少し説明をしたいと思います。 フィギュアスケート資料室さんの「用語辞典」から引用させて頂きますと…
●ターン…turn。片足で向きを変える動作。スケートを回転させる方向と、前後でカーブの向きが変わるか否かで4種類(スリー、ブラケット、ロッカー、カウンター)に分けられる。付録・ターンについても参照。呼び方はこの通りだが、同じターンでもエッジの数だけ(左足か右足か、初めが前向きか後向きか、インかアウトかで8通り)ある。ターンとは少し違うが、シングル・ペアのステップシークエンスではツイズル、ループもこのグループに入れて考える。 ●ステップ…step。足を踏みかえる動作。モホーク、チョクトー、トウステップ、シャッセ、プログレッシブ、クロスロール、チェンジエッジなど。 ストロークなど両足の接氷時間が長いものはステップではない。
…ターン・ステップの意味については、そのようにあります。 おそらくそれは正しい意味です。 …が、当ブログではこの意味では使いません。 次のような意味で使います。
●ターン…前後の向きを切り替える動作を指す。片足・両足を問わない。 ●ステップ…ターンを含む、ステップ動作全般を指す。
…多分これは厳密に言うと間違っていると思います。 でも、私は現場でこの意味で使ってきました(上述のような厳密な意味では使わなかった)し、それで周りにも通用していました(周りもそういった厳格な意味では使っていなかったように思います)。 ですので、当ブログでは今後もこの意味で使っていこうと思います。 そうしないと、例えばモホークをターンと呼べなくなってしまい、こういった点で凄い違和感が発生してしまいますので…(モホークをターンと呼べないのは、やはりおかしいと思います)。 なお、当ブログの意味によると、個々の技…例えばチョクトウやツイズルについて「これはターン?それともステップ?」といった疑問が生じることもあるでしょうが、その辺りは余り拘らないスタンスで行こうと考えています。 宜しくご理解下さい。
もう一つ。 一歩進んだジャンプの見分け方でも説明したことですが、復習の意味を兼ねて改めまして。 エッジの種類…これは以下の法則により、アルファベット3文字の組み合わせで表現されます。
{ R(右) or L(左) } + { F(フォア) or B(バック) } + { I(イン) or O(アウト) }
具体的には、例えば左フォアアウトですと「LFO」となります。
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さて、ステップにはいろいろ種類があるのですが、今回は以下の片足で行うターンについて説明したいと思います。 ・スリーターン たった4つ…なのですが、どのエッジでターンするかによって種類が細分化されます。 つまり、エッジには8つの種類がある(詳しくはココを参照)わけですから、8×4で合計32種類の片足ターン(※)があるということになります。
…では、実際にそれらのターンについて見てみましょう。
●スリーターン
これは以前にも説明しましたよね。 もう一度説明しますと…
・フォアからバック、或いはバックからフォアに向きを変えるターン ・ターンの前後でフォアとバックが入れ替わるのはもちろんだが、インとアウトも入れ替わる(例えば、左フォアアウトに乗っていてスリーターンをすると、左バックインになる) ・「ターンの回転方向(図では左回転)」が「ターン前のトレースの回転方向(図では左回転)」と同じになる ・「ターン前のトレースの回転方向」と「ターン後のトレースの回転方向」が同じになる(つまり、両トレースを併せると円になる) ・エッジの種類数だけスリーターンの種類があり、計8種類のスリーターンが存在する
…ということになります。 全てのエッジについて、スリーターンはよく使います。 …が、個人的な使用頻度を書くと… ①左フォアアウト・スリー …となりますでしょうか?(上ほどよく使います) 因みに、これはスリーターンに限らず全ての片足ターンで共通することですが、ターンの時においては、フォアからバックへの片足ターンの場合は「足のつま先側を軸にターン」し(図でもそうなっていますよね)、逆にバックからフォアへの片足ターンの場合は「足のかかと側を軸にターン」します(トレースはどちらも基本的には変わりません)。
●ブラケット
余り使わないように思います。 …が、新採点方法になってから多少は脚光を浴びるようになった感もあります(後述の定番ステップパターンを除いて。旧採点方法の時代からそのステップパターンはよく使われていましたので)。 説明としては…
・フォアからバック、或いはバックからフォアに向きを変えるターン ・ターンの前後でフォアとバックが入れ替わるのはもちろんだが、インとアウトも入れ替わる(例えば、左フォアアウトに乗っていてブラケットをすると、左バックインになる) ・「ターンの回転方向(図では右回転)」が「ターン前のトレースの回転方向(図では左回転)」と逆になる ・「ターン前のトレースの回転方向」と「ターン後のトレースの回転方向」が同じになる(つまり、両トレースを併せると円になる) ・エッジの種類数だけブラケットの種類があり、計8種類のブラケットが存在する
…スリーターンとよく似てはいるのですが、やはり特徴的なのは「ターンの回転方向がスリーターンとは逆」ということでしょう。 たったそれだけの違いですが、スリーターンと比べるとやはり難しくなります。
最もよく使うのは「フォアインのブラケット」でしょうか。 印象的な例で言いますと、今シーズンの小塚選手のフリーのストレートライン、最後の最後、リンクの一番端に行ったときになされるターン(2:29~2:30)…あれがブラケット…この場合は右フォアインのブラケット…です。 腰の決まり方が理想的でとても良い感じです。
定番のステップパターンとしては、「バックアウト・スリー」→「フォアイン・ブラケット」というのが有名でしょうか。 浅田真央選手がよく使っていますよね。 2:43辺りからクルクルと回って、その直後左バックアウトに乗り、「左バックアウト・スリー」→「左フォアイン・ブラケット」と繋げているのが一つ。 もう一つは2:56~2:57辺りで右バックアウトに乗り、「右バックアウト・スリー」→「右フォアイン・ブラケット」というものです。
逆に、全く使わない(或いは殆ど使わない)のが「バックインのブラケット」「バックアウトのブラケット」でしょうか。 特に「バックアウトのブラケット」は難しい(というか、怖い)ですので…。
●ロッカー
説明としましては…
・フォアからバック、或いはバックからフォアに向きを変えるターン ・ターンの前後でフォアとバックが入れ替わるが、インとアウトは入れ替らない(例えば、左フォアアウトに乗っていてロッカーをすると、左バックアウトになる) ・「ターンの回転方向(図では左回転)」が「ターン前のトレースの回転方向(図では左回転)」と同じになる(つまり、ターンを終えるまではスリーターンと同じ流れ) ・「ターン前のトレースの回転方向」と「ターン後のトレースの回転方向」が逆になる(つまり、両トレースを併せると「S」の字になる) ・エッジの種類数だけロッカーの種類があり、計8種類のロッカーが存在する
特徴的なのは、「Sの字」「ターンの回転方向はスリーターンと同じ」ということでしょう。
ロッカーは旧採点方法時代からプログラムのあちこちで使われていまして、実例を示しますと… この動画ですと、2:13辺りの2A後のフライングキャメルを終わって、フォアクロスを3度くらい入れてからおもむろに「右フォアイン・ロッカー」でターン(2:30辺り)し、そしてバッククロスに繋ぐ…という感じになっています。 …いや、いつ見ても惚れ惚れします(「なにその安定感?」と突っ込みを入れたくなるほどです)。 フォアインのロッカーは、こんな感じに繋ぎのステップの中でアクセント的に用いられることが多いような気がします。
他の例ですと… 最初の3F+3Loの後、クロスを一回入れ、2回チョンチョンと跳ね、右バックインに乗ったところで「右バックイン・ロッカー」→「右フォアイン・ロッカー」→「右バックイン・ロッカー(※)」としていますよね(1:16辺り。3連続でクイクイっとターンする部分です)。
この場面では3回ロッカーを繰り返していますが、バックインに乗った後、偶数回(2回や4回)ロッカーを繰り返して止めるのが定番です(バックインから始まってバックインで終わる…という感じです)。 その定番パターンとしては… ラストのストレートラインの冒頭で右バックインから4連続ロッカー→右バックインに乗ったところで止める…という定番通りのパターンになっています(2:17辺り)。
もう一つ定番としての使い方は… 4:31辺りでバタフライで跳んだ後… バッククロスを一回入れた後の右バックインでロッカーをし(このとき乗っているエッジは右フォアイン)、左バックアウトに乗ってクロス …という「バックイン→ロッカー→クロス」というのも非常に定番ですね(一瞬なので分かりづらいですが)。
更にもう一つ例を挙げると… 先に紹介した動画と同じ動画ですが、ここでは「フォアアウトのロッカー」が使われています。 一回目は2:19~2:20辺り、リンク上の「SKATE」の文字の「T」を通り過ぎる直前のターン(これは「左フォアアウトのロッカー」です)。 二回目は2:26辺り、クルクルと回った後すぐの片足のターン(これは「右フォアアウトのロッカー」です)。
…沢山例を挙げましたが、例に挙げなかったロッカーに関しても結構使われています。 ロッカーに関しては、現採点方法になってからは8種類全てが割と満遍なく使われている印象を受けますね。
●カウンター
説明としては…
・フォアからバック、或いはバックからフォアに向きを変えるターン ・ターンの前後でフォアとバックが入れ替わるが、インとアウトは入れ替らない(例えば、左フォアアウトに乗っていてカウンターをすると、左バックアウトになる。この点はロッカーと同じ) ・「ターンの回転方向(図では右回転)」が「ターン前のトレースの回転方向(図では左回転)」と逆になる(つまり、ターンを終えるまではブラケットと同じ流れ) ・「ターン前のトレースの回転方向」と「ターン後のトレースの回転方向」が逆になる(つまり、両トレースを併せると「S」の字になる。この点はロッカーと同じ) ・エッジの種類数だけカウンターの種類があり、計8種類のカウンターが存在する
特徴的なのは、「Sの字」「ターンの回転方向はブラケットと同じ」ということでしょう。 カウンターも現採点方法になってから一層脚光を浴びるようになったステップだと思います。
…実はこのカウンター、一見難しそうに見えるのですが(いや、まあ難しいのですが)、実際やってみると意外と簡単にできたりします。 個人的には、ブラケットやロッカーの方が難しいと思うところです。
…では、実例を示しますと… えーと、何度も登場させてすみません小塚選手…。 2:16にカメラのアングルが切り替わった直後のターン…これが「右バックインのカウンター」です。 ターン後にスケーティングレッグの後ろ側にフリーレッグをクロスさせるような動きをするのが、このターンの特徴です(この例ではちょっと極端目にクロスしていますが)。 非常に定番的によく使われますので、覚えておきましょう。 2:13~2:14にもカウンターが使われていますよね(この場合は「左フォアアウトのカウンター」)。
カウンターに関しては、この「バックインのカウンター」がよく見かけるのですが、「フォアインのカウンター」も時々見かけますでしょうか。 でも、「バックアウトのカウンター」は余り見かけないような気がします(「バックアウトのブラケット」同様難しいですので…)。
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●まとめ いろいろと書いてきましたが、まとめますと次の図ようになります。
ただ、こういった知識があっても、実際問題としてその場その場で見分けられるかというと、そうでもないと思います。 ターンの瞬間瞬間で「いまどのエッジを使った?どの方向に回転した?」と判断するなんてことは、経験者でなければ、余程の動体視力と判断力を持った人でないと、まず無理だと思います。 やはり実例を何度も見て頂いて、ターン前後の上半身の動きやフリーレッグの動き(※1)、そして定番ステップパターン(※2)を覚えた方が、瞬時に理解できるのではないかと思います(このことは、一歩進んだジャンプの見分け方で踏み切るエッジに着目するのではなく、プレパレーションに着目したのと同様です)。
ビデオのスローやコマ送りなんかを駆使して勉強するのも効果的かもしれないですね。 一歩一歩のエッジの明確さという点では、今シーズンの現役選手の中では小塚選手が最も優れていると思いますので、ビデオで研究するのでしたら小塚選手の演技を観ることをお勧めします(今シーズンのビデオなら皆さん持ってますよね?)。 スポンサーサイト
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こういう資料が欲しかったんです!!
ありがとうございました。 足型図付きの説明、と実際の選手のステップ参照説明、至れりつくせりで頭が下がります。 なかなかわかりにくくて覚えられないステップの種類と実際の見分け。 ここまで親切な説明、私は初めてです。 資料を求めて本屋に行くほどの気概もなかったのに お師匠さんのブログにめぐり合って ステップへの興味に「持続力」がつくようになりました。 ところどころ入れてくださる「良く使われるので覚えておきましょう」などの一言が、くじけそうになる頭を後押ししてくれてます。 この資料をノートに書き写そうと思ってます。
[2009/03/26 01:37]
URL | さざんか #-
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いまやっている世界選手権なんかでも、ここで紹介したステップが沢山使われていますので、じっくり見てみると面白いと思いますよ。
ある日ふと気づいたら見分けられるようになった…みたいなこともこれからあるかもしれないですね。
[2009/03/26 18:47]
URL | 管理人 #-
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パンダ師匠、有難うございましたm(_ _)m。
ターン(ステップ)のエントリー! 描画と各動画とを見比べて 「スリーとブラケットが円」「ロッカーとカウンターがS字」 「スリー、ロッカーのターンはカーブと同じ回転方向」「ブラケットとカウンターのターンはカーブと逆の回転」と、理解しました。 ロッカーは村主さんと小塚くんのが私的に解りやすかったです。 カウンターは小塚くんがとても解り易かったです。 高橋選手は本当に早い・・・のでまだこれからです。真央ちゃんも。 佐藤さんは素晴らしいのだということだけなんとなく(評価高い方ですよね)、まだこれからです。 まだ数回しか見てないので(今日都合で出かけてました~!世界選手権の男子SP録画も今晩観なければ!)これから何回もみて勉強していきます。 とても知りたいことだったのでさざんかさんと同じく感謝しています。有難うございました!
[2009/03/26 19:18]
URL | LaLa #H8HsapLU
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