2010-2011シーズンのルール改正 #02
国際スケート連盟コミュニケーション第1619号(英語版)が公開されました。
大きな変更が幾つかありますので、また見ていきましょう。 以下、例のごとく、適当に翻訳してみます(誤訳・解釈の誤り等があったときはご容赦を)。 基本的に『私見』『推測』といったものがベースですので、その辺りはご了承下さいね。 ========== (以下、青字の記述は個人的な補足です) 国際スケート連盟コミュニケーション第1619号 シングルおよびペア・スケーティング Ⅰ.第53回ISU総会にて認証された、特別規定とテクニカルルールについての変更点 ■テクニカルルールについての変更点■ ●1.シングルおよびペアスケーティング(シニアとジュニア): a)ジャンプコンビネーション: ジャンプ間をプロトコルに記載されないジャンプで繋いだ場合、その要素は一つのジャンプシークエンスとしてコールされる。ただし、コンビネーション/シークエンスにおいては、ハーフループはシングルループの価値を持つ一つの(プロトコルに記載される)ジャンプとして認定される。 b)スピン:単一姿勢のスピン、および(シングルにおける)フライングスピン(足換えや姿勢変化を含まない、フライングエントランスのスピンを意味する)について: スピンを終了するためのアップライトポジション(ファイナル・ワインドアップ(※1))は、ファイナル・ワインドアップのように追加特性(チェンジエッジや姿勢変化等)が無いものである限りは、その回転数に関係なく、別姿勢とは見なされない(※2)。 (※1)以下は推測ですが、これが何を指すのかといいますと、例えば、右足シットスピンからスピンを終えようとした場合、右膝を曲げたままチェック(=ジャンプの着氷時にとるフィニッシュポーズと同等のモノと考えて下さい)に移るということはせず、通常は一旦右膝を伸ばして立ち上がったような姿勢をとり、その姿勢(フリーレッグや腕は開いたまま)で何回転かした後でチェックに移りますよね。このような立ち上がった後の回転している状態を「ファイナル・ワインドアップ」と表現しているものだと思われます。なお、これは右シットの後に限った話ではなく(※a)、また右足でしかワインドアップが出来ないということでもない(と思います)ので、ご注意下さいね(左右の足のシットやキャメルから、左右それぞれの足のワインドアップに移ることが多いでしょうか)。 (※2)従来は以下のような規定でした: >単一姿勢のスピンとフライング・スピンでは、スピンを終了するためのアップライト・ポジション(ファイナル・ワインドアップ)は,3回転を超えなければ別姿勢とはみなされず,そこでの回転は要求される回転数には含まれない。(2009-2010テクニカルパネルハンドブックより) …なお、従来は、例えば「右シット→3回転までのワインドアップ回転」は単なるシットスピンと、「右シット→3回転を超えるワインドアップ回転」はシット+アップライトのスピンコンビネーションと、それぞれ認定されていたようです。それが今回の改正で、チェンジエッジや姿勢変化等が無いワインドアップのような回転を何回転してもスピンコンビネーションとされることは無くなった…ということになるものだと思われます(単一姿勢のスピンと、足換え・姿勢変化の無いフライングスピンについて)。コンビネーションとコールされて欲しくないスピンがコンビネーションとコールされてしまうことが無くなる…といった点で便利な規定となるのでしょうかね? ●2.シングルのショートプログラム(シニアとジュニア): a)ショートプログラムは7つの必須要素で構成される。 b)男子(シニアとジュニア):ステップシークエンス(ストレートライン・サーキュラー・サーペンタイン)は一度だけ要求される。 c)女子(シニアとジュニア):スパイラルシークエンスは要求されない。スパイラルを実施した場合、それは“トランジション”で評価される。 d)シニア女子では、単独アクセルとしてダブルもしくはトリプルを跳ぶことが出来る。 e)シニア男子:異なる種類の4回転ジャンプを2つ跳ぶことが出来る(ただし、一つはコンビネーションジャンプの一つとして、もう一つはソロジャンプとして跳ぶ必要がある)。 f)シニア男子:フライングスピンにおける着氷(直後に為すスピンの)姿勢と、単一姿勢のスピンにおける姿勢は、異なるものでなければならない(例:FCSp(フライングキャメルスピン)とCSSp(足換えシットスピン)(※))。 (※)ショートでは、「フライングスピン」と「足換えスピン(=単一姿勢のスピン)」が必須要素として要求されていると思うのですが、ここでの例ように、それぞれの必須要素について、姿勢を指す部分の名前(この場合は「キャメル」と「シット」)が異なるものでなければならない…というものだと思われます。ですので、例えば「フライングスピン」にフライング『シット』スピンを用いたのであれば、「足換えスピン」は足換え『キャメル』スピンでないといけない…ということになりますね。 ●3.シングルのフリープログラム(シニアとジュニア): a)シングルのフリープログラムにおいては、トータルで2回までしかダブルアクセルは認められない(ソロジャンプ、もしくはコンビネーション/シークエンスの一部としては)。 b)シニア男子:(実施した順番で)2つ目のステップシークエンスは、常に、固定された基礎点とジャッジによるGOEのみによって評価される(※)。このシークエンスは、リンク全面を十分に活用している限りは、どのようなパターンのものも認められる。 (※)「Choreo Step Seq.」と呼ばれるものとなるようです。基礎点は2.0で固定され、GOEは+3の場合は「3.0」の加点に、-3の場合は「-1.5」の減点になります。 c)シニア女子:スパイラルシークエンスは、常に、固定された基礎点とジャッジによるGOEのみによって評価される(※)。このシークエンスにおいては、少なくとも、それぞれの姿勢が3秒以上の2つのスパイラル姿勢、もしくは6秒以上の1つのスパイラル姿勢が含まれていなければならない。この要求が満たされない場合、そのスパイラルシークエンスは価値無しとなる。 (※)「Choreo Spirals」 と呼ばれるものとなるようです。Choreo Step Seq.と同じく、基礎点は2.0で固定され、GOEは+3の場合は「3.0」の加点に、-3の場合は「-1.5」 の減点になります。 ●4.(ペア規定なので省略) ●5.(ペア規定なので省略) ●6.違反要素:いかなる要素が実施されたとしても、そこに違反動作(バックフリップ等が該当すると思われます)が含まれる場合は、違反動作に対する減点が適用され、もしその要素が少なくともレベル1の要件を満たしているようなら、レベル1の評価を得る(レベル1の要件さえ満たしていないようなら、“レベル無し”とコールされる)。 ■特別規定についての変更点■ ●1.国際競技会におけるテクニカルパネルの構成 国際競技会においての情状酌量的例外として、一人のナショナルテクニカルスペシャリスト(大会ホスト国からの者)がアシスタントテクニカルスペシャリストを務めてもよい(※)。この場合、当該アシスタントテクニカルスペシャリストは、ISUメンバーの一員として任命される。 (※)ナショナルレベルのテクニカルスペシャリストが、例外的に、インターナショナルレベルのアシスタントテクニカルスペシャリストとして活躍できる…ということだと思われます ●2.再開:(演技中断後の)再開において、-2.0の減点は最早適用されない;しかしながら、ジャッジには、PCSについてのマイナス方向への影響の可能性について考慮するようにとの忠告が為される。 ●3.減点: a)コスチューム・小道具・音楽の違反 レフリーは、ジャッジパネルと共に、コスチュームや小道具違反・ボーカル音楽についての決定を下す;対応する減点は、パネル(全てのジャッジとレフリーを含む)の過半数の意見に従って、適用される(五分五分で意見が分かれた場合は、減点は適用されない)。 b)転倒と違反要素 テクニカルコントローラーとテクニカルスペシャリスト(アシスタントテクニカルスペシャリストを含む?)は、転倒と違反要素についての決定を下す。減点は多数決によって適用される。 (以下省略) ========== 大きな所は、 ①女子ショートの「単独アクセル」についてのトリプル解禁 ②男子ショートでの2つ目の4回転解禁 ③フリーでのダブルアクセルの回数制限が「3回」から「2回」に ④男子ショートでステップシークエンスが1つに ⑤女子ショートでスパイラルが必須要素から外れた ⑥コリオステップシークエンス・コリオスパイラルの導入 …といったところでしょうか。 ①~③は…なんというか、「五輪で騒がれたので変えてみました☆テヘッ」みたいな印象なのですが…。 ④はちょっとよく分からないのですが、2回目のステップシークエンスは入れてはいけない(全く評価されない)ということなんでしょうかね? 女子ショートのスパイラルのように、入れるのは自由だが入れた場合はTRで評価される…とか、そういったことではないんでしょうか? ⑥は実際の運営を見てみないとよく分かりませんが、「レベル要件の縛りを無くした」という点では個人的に賛成です。 ただ、スパイラルとステップが同じ点数というのはちょっと違和感を感じるところで…。 スパイラルというのは、選手にとって「休憩」の意味合いが強いものだと思われますので、ステップと同等の価値を与えるのはどうかと思ったりします。 というか、それ以前に、ステップはもっと全体の得点に対して占める割合を上げるべきだと思うのですが…。 因みに、コリオステップシークエンスは、どうやら必ず2回目に実施されたステップシークエンスがそれに該当することになるようですが、この点は「ジャンプの予定等を記したプログラムコンテンツシートに選手は従う義務は無い」といった取り決めに対してはある種例外的規定となりますね。 また、為された技の外見だけで「何の技なのか」を判断していたこれまでとは異なり、為された順番によって「何の技なのか」を判断する…という点で、これまでにない特徴的な規定とも言えますよね。 もう一つ因みに。 ワインドアップ(※)という言葉が出てきました(この言葉自体は今回初出というわけではありません)が、実はこれ、スピンを美しく終える方法として、選手は意識的に、或いは無意識に、取り入れていることが多いんですよね。 (※)因みに、私は現場でこの言葉を使ったことも聞いたこともありません…ので、一般的に使うべき言葉ではないのかも 知れま せん(ルールを理解するときにだけ使うべき言葉…なのかも)。もっとも、現在(の現場)ではどうなのか知りませんが…。 例えば、シットスピンで膝を曲げた状態から、立ち上がることなく…つまりワインドアップを挟むことなく、直接チェックに移ってしまうと…終わり方としてあまり美しくは見えないんですよね。 やはり、このワインドアップで2~3回転した後にチェックに移る方が美しく見えます。 といっても絶対的なものではなく、原則的なものなんですけどね。 曲のノリやプログラム構成・振り付けなんかによって臨機応変に利用されていくものだと思います。 …と、そういった美しく見せるためのコツのようなものがありますので、皆さんも今後スピンを見るときは意識してみて下さいね。 スポンサーサイト
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a)ジャンプコンビネーションのところで、「コンビネーション/シークエンスにおいては、ハーフループはシングルループの価値を持つ一つの(プロトコルに記載される)ジャンプとして認定される。」って、ループが跳べないキムヨナが、「ループも跳べる」と言えるようにするためのすり替えルールみたいに見えるのですが、どう思われますか?
[2010/06/29 13:21]
URL | よし #-
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>よしさん、横槍のような形で申し訳ありません。
キムヨナ選手の3連続ジャンプは、2A+2T+2Loですよね。 現状でも、2回転ならループも飛んでますが、「ループが飛べる」とは誰も言いません。 考えすぎかと思いますよ。 逆に、2Aが2回に制限されたことで、3連続を、2-2-2にするか、 3Lz-2T-2Loにして、3Loを入れるか、といった選択になると思いますので、 3Loを入れてくる可能性もあるかなと。。。
[2010/07/02 00:02]
URL | kj #-
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質問なのですが・・・
初めまして。少し理解が深まりました。ところで質問なのですが・・・
1.bのスピンの改正は、コストナー選手のような場合の救済策と考えてよろしいでしょうか。彼女は、09年ユーロ・フリーで、2番目のスピン(CSSpを意図した模様)が、2回目のCCoSpとしてノーカウントになりました(確か、この件で、イタリア連盟はISUに抗議したと記憶しています)。 関係部分の動画 http://www.youtube.com/watch?gl=JP&hl=ja&v=M9idFZMkm74#t=2m38s では、
[2010/07/05 22:25]
URL | Kalashnikov #mQop/nM.
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パンダ師匠 さん、
はじめまして。 どうぞ、「踏み絵」を踏んでから、お話ください。↓ 若者にデマを広めないために http://megalodon.jp/2010-0517-1119-47/messages.yahoo.co.jp/bbs?action=m&board=1835594&tid=a5ua5a3a5aea5ea5a2bdwbbram9ga5ha5ta1za5ja5ka5ea1bca5a2a5k&sid=1835594&mid=6775 ウソに「ウソだ」「ウソを無くそう」と言えない人など、反社会的な人は、 公開での発言をご遠慮ください。 若者にデマを広めないために、 ご協力お願いします。
[2010/07/06 05:01]
URL | しょう #-
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スパイラルは休憩するところ???
>スパイラルというのは、選手にとって「休憩」の意味合いが強いものだと思われますので、ステップと同等の価値を与えるのはどうかと思ったりします。
この要素「休憩」するところだったとはびっくりです。 得意な選手不得意な選手がいるのは見ていてわかりますが、難しいポジションをきれいにぶれることなくこなしていたり、足を高く上げ、決められた秒数をキープしていたりして難しい要素をこなしている選手もいます。とても休憩しているようには見えませんでした。この要素がすばらしく優れた選手には残念なルールだと思います。 はじめまして
ワインドアップという言葉、今は現場でも使われていますよ。
スパイラルは昔はまさに「休憩」するところでしたね。 今は様々な柔軟的なポジションを入れなければならないし、チェンジエッジしたり長くキープしたり・・・結構キツイです。 それでもステップよりは楽なので、同じ基礎点というのはちょっと?と思います。
[2010/07/13 23:34]
URL | 真奈美 #-
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[2010/10/25 15:58]
| #
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>真奈美さん
随分遅れましてスミマセン…。 「休憩」と表現したのは、ジャンプ前に加速のためにガシガシ漕ぐようなしんどさは無いよね…的な感じで(私が)使ったのでしたでしょうか? ワインドアップは現在は使われているんですね…なるほど了解です。 教えてくださってありがとうございました。 >一つ↑の方 書き込みありがとうございます。 高橋選手のルッツのプレパレーションについては、新しいエントリーに書いた分と、フリーの方の一回目のルッツ(のプレパレーションの前半)が新しくなっているようですね(確か)。 ロングエッジの判定については、確かに私も以前疑問を抱いたように思います。 …確か、昨年度のフィンランディア杯、村主選手のフリップにロングエッジの判定がなされた(でしたよね?)のを受けて…ということだったような?(村主選手のフリップがアウト側に傾くということはまず考えられませんので…) もしかすると、例えばフリップの場合、アウトサイドに傾いていなくても、フラット気味というだけでもロングエッジの判定が付くようになった…ということなのかも知れませんね。 個人的には、フリップは、踏切の瞬間のエッジは、通常はフラット気味になるものだと思うのですが…。 フリップで踏み切る瞬間も深くインサイドに乗っている…というのは、浅田選手や村上選手が確かそうでしたでしょうか? ただ、個人的にはそういった選手のフリップは特殊な例だと思いますので、それが標準であるかのように考えるのはどうかと思うところ…だったりします。 アンダーローテーション…なんですが、解説で八木沼さんが「ダウンローテ」と表現していましたよね? これは八木沼さんが間違えて表現しているのか?…あるいは「ダウンローテ(ーション)」というのが日本語としての正式な用語となったのでしょうかね?
[2010/10/28 23:59]
URL | 管理人 #znV3k9no
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